ラフ スペシャル・エディション

冒頭で渡辺えり子扮する寮母が「ラフ。未完成こそがあなたたちの武器。
どんな見事な絵も最初はラフな下書きから始まる」と寮生たちに語るが、
このフレーズはそのまま映画『ラフ』を象徴している。
80年代に人気を得た原作とはいえ、
ロミオとジュリエット」さながらふたつの家がいがみ合い、
それが主役である亜美の精神形成に影響を与えているという、
リアリティのかけらも感じられない設定。
またその亜美が幼なじみの弘樹を婚約者としているのは、
実家倒産の危機を救ったからという、時代錯誤なシチュエーション。
そうした非現実的な要素が支配する世界観であるにも関わらず、
長澤まさみ速水もこみち市川由衣高橋真唯若手俳優たちの誠実で伸びやかな演技が、爽快な印象を与えてくれる。
特に長澤は、高飛び込みの選手との設定から水着姿を披露するが、
そのセクシーな健康美には、めまいを覚えるほど。ただし大谷健太郎監督の思い入れか、
随所に加山雄三の青春歌謡が登場するあたりは、
作品内容との違和感を感じずにはいられない。

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